テラウチのトイレ

テラウチのトイレ

すずめの戸締まり、あんまり好きじゃなかった話

 すずめの戸締まり90点くらいかな~と思ってみたら70点だった、みたいな感覚。悪くなかった。けど、なんだかなあ。その良くなかった部分がテラウチ的に致命的な部分でなあ。

 「よかった部分もあったけど」が一言での感想だな。

 

 評判かるーく目を通したけど、概ね好評で多分テラウチがおかしいっぽくて軽く鬱です。

 


 ※以下すずめの戸締まりのネタバレ含む※

 


 以下、基本的にディス。


 新海誠のテラウチが全く好んでないところをハイクオリティで作ってきたよって感じだった。
 そういう根本がテラウチの好んでない方向性なのにコンセプトのバックボーンに東日本大震災っていう大切に扱ってほしい話題を仕込んできたのがマジで最悪だった。

 震災という現実ではすべて諦めざるを得ない、理不尽として飲み込むしかないものに、閉じ師とかいう人為的な背景を混ぜ込むのやめてほしかった。ツボマッサージに行ったら全然ツボじゃないところを「効くでしょw」って言われながらぐいぐい押された感じ。新海誠、テラウチの心の底に響く作品を作ることはないんじゃないのとさえ思った。いや、過去作見ればそんなことないって思うけど。


 他にも思ったのは、廃墟になった場所の扉は、人の思いという重しがなくなって常世との扉が開く、みたいな設定。違うだろ。人間の心の原風景ってそういうんじゃねえだろ。ふるさとって寂れても行かなくなってもどんなになっても人の心の奥底にあり続けるものなんじゃないの。遊園地も学校もいつまでも誰かが馳せる思いでとしてあり続けるから、絶対に開かないだろ。少なくとも通りすがりの知らん奴が思い馳せただけで重しにはならんだろ。

 そういうテラウチの重きを置いてる価値観からズレた「やだな」に触れ続けてきた感じ。


 メインの二人が好きになれなかったし、理解できなかった。特に宗像草太に岩戸すずめがこだわった理由が納得できない。顔か? は? って感じ。東京に着いたあたりから宗像草太の魅力みたいなものは分かるんだけど。岩戸すずめが家から離れたかったってのも話が進めば分かるんだけど。でも、命かけるほど好きになる物語的必然性が描写ない。

 やろうと思えばできたはずの説得力を持たせる演出が全くない。あの軽薄で適当な感じに見えるのマジでどうにかできただろ。だってあの椅子が大切なものなんだってことを序盤に強調するだけでも、すずめが草太についていったの納得できるもん。そういうのがないから、もうだいぶ序盤からテラウチの心だいぶ離れてた。他の登場人物はよかったけど。
(宗像草太、閉じ師とかいう浮世じみた使命と教員試験受けてっていう普通の学生として生きるところの差みたいな部分はよかった。ファンタジックなキャラだっていう風に思わせといて、現実を生きる人間としてのキャラのギャップ)


 テーマ、母親の死から克服として捉えればいいんだろうけど、ドチャドチャに分かりづらい。他に強い要素が多すぎる。クッサイボーイミーツガールばかりが目に付く。

 あと、ダイジン可哀そうすぎる。ダイジンって作中草太と結ばれたすずめが産むことのなかった子ども、さらに言うならありえた未来的なモノだと解釈したんだけど、うーんだから余計その救われなさがね。テラウチがそう解釈してしまったからかもだけど、すずめが子を体よく利用しただけのように見える結末が、母親の死からの克服を作品のテーマとして捉えるにも、純粋性が失われているように思える。未来を向くという帰結が必ずしも美しいものじゃなく思える。


 結論、すずめの戸締まりちょっと嫌いだわ。

 

 まあ、シーン進むにつれて気にならなくなってくる要素も多分にあるし、東京からのドライブシーンは普通に面白かったし、昔の家ついてからの日記帳のシーンとはぐっとくるものあったし、最終的にぐぐぐっと持ち直して「お、なんかいい感じだったかも」って思った。
 でもテラウチは嫌いかな。


 以上です。