テラウチのトイレ

テラウチのトイレ

組体操ピラミッドの一番上で「やーー!」したのはツラい思い出という話

 小学校の組体操、やらないところ増えているらしいね。
 神戸だかどっかの小学校で市長の中止要請を振り切って組体操でピラミッドやって、児童50人がケガしたとかなんとか。

https://www.sankei.com/life/news/190930/lif1909300018-n1.html
 危ないならやめた方がいいと思いますよ。マのジで。

 

 かくいうテラウチも小学校のときピラミッドやりました。出生した時から平均体重をいつでも大幅に下回っていたテラウチは、一番上で「やーーっ!」って立ち上がる役だった。
 あれ、今思い返してもクソクソクソきつかったなあ。
 確かに一番の花形だし、人を踏んづけるだけだし、なんだろうけど、精神がとにかくきつかった。

 順を追って話そうか。小学生のクラス内ヒエラルキーの話から。
 小学生は足の速い奴がカッコいい。運動のできる奴がモテる。腕っぷしの強い奴が偉い。こいつらがスクールカーストの上位にいる。
 そしてこいつらってのはもちろん体格がいい。がっしりしてる。少なくともテラウチみたいにヒョロガリじゃない。

 つまり、組体操の時はスクールカーストの高位の奴を踏んづけて、運動神経の悪いヒョロヒョロガリガリカースト底辺が一番上で「やーーっ!」ってやるわけ。これがどんだけ滑稽なことかわかる?
 まずやるときは最悪だよね。ピラミッドの最上に行くためにヨツンバインになっている人間を登るんだけど、大体人間ってのは踏まれるためにできてない。すんごいぐにゃぐにゃする。足場の悪いところを登ろうとすると体力が奪われる。体操服を着てるから余計に悪くて、進もうとすると滑る。運動神経が悪いからバランスも取りづらくて余計に力強く踏みつけたり、つかんだりする。すると踏んだ人から「痛い!」「どこ踏んでんだよ!」「早く登れよ!」等々、口々に飛んでくる野次、罵声。焦って余計足元は定まらなくなるし、徐々に地獄の様相を呈してくる。

 練習が終わってから「もうちょと早く登れないの!?」とか言われたらもう最悪で「……ごめん(のぼれねーーーーーーよ!! ハゲえ!! 早く登ってほしいんだったら背中ピンとしたまま動くな!! 乗った瞬間ぐにゃぐにゃすな!! そして汗をぜーーーんぶ拭き取って体操服をぬげーーー!!!!)」って感じ。

 でさ、運動会が終わってからもみんなこの話題になるたび、口々にどんだけ自分がきつかったか言うわけ。隣の誰々が汗まみれだの、膝に砂利が刺さって痛いだの、テラウチが背中に乗った瞬間がきつかっただの。
 この時、どういう顔をしていればいいの? 人とのコミュニケーションでクラス内ヒエラルキーの立ち位置を維持しているテラウチは、どうしていればいいの? 話題に参加できないだけならばともかく、目の前で自分が悪役にされてるんだぜ。いや、ただ単に事実を言っているだけなんだろうけど。「やー」する踏み台になってくれている人たちには遠く及ばないかもしれないけど、テラウチだって十分きつかった。
 踏んだ人からの恨み節、絶対に一番上で立ち上がらなくちゃっていうプレッシャー、滑る足元、焦り、それらがごちゃ混ぜになってぶつかってきて、きつかった。精神がきつかった。
 でも、誰も理解してくれる人はいない。みんなの評価は「人の背中踏みつけて、キツイ思いもしてなくて、一番の目立つポイントを掻っ攫っていく奴」でしかない。だからテラウチも自分がどれだけ大変だったか誰にも訴えられない。

 テラウチは下の人を経験してないから分からないだけで、もしかしたら一番上で「やー」するのが一番楽なのかもしれない。でもね、当時の俺は多少きつくても「その他大勢」でいたかった。そして、みんなと「あれきつかったよなー」って言いたかった。「組体操で育むみんなの一体感」の中に混ぜてほしかった。

 まあ、そんなことなのでテラウチは組体操、特にピラミッドは反対です。ケガもあるしね。

 以上。